

「どうして電磁波は真空でも伝わるの?」
音は、空気がないと届きませんよね。
太鼓の音も、声も、空気という“揺れる相手”がいないと進めません。
ところが一方で、 電磁波は、何もないはずの宇宙空間でもスイスイ進んできます。
太陽の光が地球まで届くのも、人工衛星と通信できるのも、ぜんぶこの性質のおかげ。
よく考えると、これ、かなり不思議だと思いませんか?
電磁波は「何かを揺らして進む波」ではなく、自分自身の変化で進んでいく波。
ここが、音との決定的な違いです。
音は「空気を揺らす波」。
でも電磁波は、 電気と磁気が交互に生まれては消える、その変化そのものが波。
だから、空気がなくても止まりません。
相手がいなくても、自走できるんです。
このページでは、そんな電磁波のちょっと不思議で、でも理にかなった性質について──
──この3つの視点から、順番にほどいていこうと思います。
難しそうに見えるテーマですが、一度仕組みが見えると「なるほど!」の連続です。
肩の力を抜いて、ついてきてくださいね。
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電場と磁場が直交して進む電磁波
電気と磁気の変化が連動し、光速で空間へ伝わる波を示す。
電磁波は物質を媒介にしていない為、真空でも伝わる。
出典:『Electromagnetic wave EN』-Photo by Piotr Fita/Wikimedia Commons CC0 1.0
音波も電磁波も、どちらも目には見えない「波」です。
でもこの2つ、仕組みをよく見ると決定的な違いがあります。
まず音。
音は、空気や水といった「物質」が揺れることで伝わる波です。
声も、音楽も、雷の音も、すべて周囲の空気がブルブル震えることで、耳まで届いています。
水面に広がる波や、地震で地面を伝わる揺れと同じ仲間。
音は、機械波と呼ばれる種類なんですね。
だからこそ、空気がなければ振動できない。
振動できなければ、音は進めない。
宇宙空間で声が聞こえない理由は、ここにあります。
一方で、電磁波はまったく別物です。
電磁波の正体は、「電場」と「磁場」のふるえ。
電磁波は、物質ではなく“空間そのものの性質”を使って進む波。
ここが、音との最大の違いです。
電磁波は、空気を揺らして進むわけではありません。
水も、地面も、実は何ひとつ必要としていないんです。
つまり整理すると──
という、かなりはっきりした違いがあります。
では、なぜ電磁波は空っぽの空間でも進めるのでしょうか。
その秘密が、電場と磁場の“助け合い構造”にあります。
電磁波は、電場と磁場がお互いを生み出しあいながら進む波です。
流れとしては、こんな感じ。
どちらか一方が消えたら止まる。
でも、 2つがそろっていれば、自分たちだけで進める。
だから
空気がなくても
水がなくても
真空の宇宙でも
電磁波は問題なく伝わっていきます。
お互いがいれば、他には何もいらない。
前に進む力は、すでに自分たちの中にある。
そんな二人三脚の関係だからこそ、電磁波はどこへでも届くんです。

シャトルから撮影されたハッブル宇宙望遠鏡
宇宙空間では電磁波が散乱・吸収されにくく、微かな光を遠方から受け取りやすい。
大気の影響を避けることで、紫外線など地上では観測しにくい波長も捉えられる。
出典:『Hubble telescope 2009』-Photo by NASA/Wikimedia Commons Public domain
しかも電磁波、ただ真空でも進めるだけじゃありません。
むしろ真空中のほうが、速く・安定して伝わるという、ちょっとズルい性質を持っています。
たとえば光(可視光)。
これも立派な電磁波の一種ですが、 光の速さが最速になるのは真空中です。
何にも邪魔されないので、 秒速およそ30万kmというとんでもないスピードで進みます。
電磁波は、余計なものがないほど本来の性能を発揮する。
これが、真空が重宝される理由です。
逆に、ガラスや水、空気の中を通ると、分子にぶつかったり影響を受けたりして、どうしてもスピードは少し落ちてしまいます。
だからこそ、「正確に」「きれいに」「ムダなく」
電磁波を扱いたい場面では、 真空という環境が選ばれてきました。
その性質が活かされている技術を、いくつか見てみましょう。
宇宙望遠鏡が宇宙空間に置かれる理由、実はここにあります。
地球の大気は、光や赤外線、紫外線を少しずつ吸収したり、曲げたりします。
でも宇宙空間は、ほぼ真空。 天体から届く電磁波を、ほぼそのまま受け取れるんです。
だから、地上では見えない遠方の星や銀河の姿が、くっきり観測できるわけですね。
粒子加速器では、電子などの粒子をものすごい速さまで加速します。
このとき、空気があると粒子がぶつかってエネルギーを失ってしまう。
そこで使われるのが、真空の通路(ビームライン)です。
余計な衝突を避けることで、電磁場による制御を、より正確に行えるようになります。
レーダーや送信装置に使われてきた
電子管やマイクロ波管の内部も、実は真空です。
電子は、空気中では自由に飛べません。
でも真空なら、電磁場に引っ張られてスムーズに動ける。
この性質を利用して、 電磁波を効率よく発生・増幅してきたわけです。
少しマニアックですが、自由電子レーザー(FEL)も真空が前提の技術です。
電子を真空中で高速に走らせ、特殊な磁場で揺らすことで、非常に強力で波長のそろった光を生み出します。
ここでも、空気は完全にお邪魔者。 真空だからこそ成立する最先端技術です。
ちょっと身近な例もあります。
昔のブラウン管テレビです。
ブラウン管の中身は、実は大きな真空の箱。
電子を飛ばして画面に当て、映像を描いていました。
あの分厚いガラスの中で、電磁現象が正確にコントロールされていたんですね。
これらの技術に共通する考え方は、とてもシンプルです。 電磁現象を正確に扱いたいとき、余計な物質は「ノイズ」になる。
だから、
──そんな場面では、「じゃあ、空気を抜こう」という判断が、いちばん合理的になるわけです。
真空は特別な環境ではなく、 電磁波の実力を引き出すための舞台装置。
そう考えると、ちょっと見え方が変わってきますよね。

「大気の窓」の図
宇宙から届く電磁波が、波長ごとに大気で吸収される度合いを示す。
ガンマ線やX線や紫外線は強く遮られ、可視光や一部の電波が通りやすい。
出典:『Atmospheric electromagnetic opacity』-Photo by NASA; SVG by Mysid/Modifications made by ぷんすけ/Wikimedia Commons Public domain
ここまで読むと、「電磁波の邪魔をする空気って、ちょっと厄介じゃない?」
そんなふうに感じたかもしれません。
でも実は、 空気が電磁波を妨害してくれるおかげで、私たちは安全に暮らせている。
──これ、かなり大事なポイントなんです。
空気は、電磁波の“邪魔者”であると同時に、命を守るフィルターでもある。
速さや効率だけを見れば不利でも、生き物にとっては、ありがたい働きのほうが圧倒的に多いんですね。
その代表例を、順番に見てみましょう。
もし地球に、空気がほとんどなかったとしたらどうなるか。
太陽から届く強烈な紫外線や、宇宙の彼方から飛んでくる宇宙線が、ほぼ無防備な状態で地表に降り注ぎます。
でも実際には、大気がそれらを吸収・減衰してくれている。
だから、生物は地表で生きていけるわけです。
皮膚が焼けるどころか、DNAが壊されるレベルの放射が、空気というクッションで弱められている。
これはもう、 邪魔者というより守護神ですね。
もうひとつ大事なのが、赤外線との関係です。
赤外線は、いわば「熱の正体」。
地球が受け取った熱は、赤外線として宇宙へ逃げていこうとします。
ここで活躍するのが大気。
空気中の成分が、 赤外線の一部を吸収・再放射することで、地球の熱がほどよく保たれます。
その結果、昼と夜で極端な寒暖差にならず、 生物が暮らしやすい温度帯が維持されているんです。
まとめると、空気は電磁波の伝わりやすさを下げる一方で、 生存に都合のいいフィルターとしても働いています。
空気は、そんな二面性を持った、とても重要な存在なんですね。
電磁波が真空でも進めるのはよ、空間にある「電場と磁場のふるえ」そのものが波になってるからなんだぜ!物質に頼らねぇってのはすげぇ不思議だけど、それが宇宙から光が届くカギだったってのは感動モンだな!
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