純水が電気を通さない理由

純水が電気を通さない理由

純水にはイオンがほとんど含まれていないため、電荷の運び手が存在せず電気を通しにくい。通常の水道水と異なり、不純物がない状態では絶縁体として働く。水が電気を通すのは主に溶けた物質の影響による。

純水が電気を通さない理由

ビーカーに入ったきれいな水。
見た目はいつもの水と同じなのに、電気はほとんど流れない──それが純水です。


「え、水って電気を通すんじゃないの?」


そんなイメージ、ありますよね。理科の実験でも、水に電極を入れると電流が流れる場面を見た人は多いはずです。


でもそれ、実は水そのものではなく、水の中に溶け込んだ別の成分が仕事をしているだけなんです。


純水は「何も混じっていない」からこそ、電気を通しにくい
この事実を知ると、水と電気の関係が一気にクリアになります。


この記事では、純水とは何か。
なぜ電気を通さないのか。
そして、どんな場面でその性質が使われているのか。
順番に、やさしく整理していきます。



純水とは何か

水分子(H2O)の2次元構造式

水分子(H2O)の2次元構造式
純水はH2Oでできていても、電荷を運ぶイオンがほぼ無く、絶縁体に近い性質を示す。

出典:『H2O - 2d』-Photo by Crazytonyi/Wikimedia Commons Public domain


 


まずは、言葉の整理からいきましょう。


「純水」と聞くと、なんとなく


「すごくきれいな水」
「透明度が高い水」


そんなイメージを持ちがちですよね。


でも実際の純水は、ただの“清潔な水”とは、ちょっと次元が違います。


見た目は普通の水。
でも中身は、かなりストイック。
電気の世界では、別物として扱われる存在です。


純水とは、「きれいな水」ではなく「余計なものを徹底的に削ぎ落とした水」です。


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不純物を極限まで取り除いた水

純水とは、カルシウムやナトリウム、塩化物イオンなど、電気を運ぶ原因になる成分をほぼ完全に取り除いた水のことを指します。


水の中に溶け込んでいる、目に見えないイオン類。
これらが存在する限り、水は電気と無縁ではいられません。


そこで行われるのが、ろ過、蒸留、イオン交換といった工程。


こうした処理を重ねることで、水の中から「電気に関係する成分」だけをひたすら引き算していきます。


見た目は、水道水とほぼ同じ。
でも中身は、 限りなくH₂Oだけに近づけられた状態


同じ「水」という名前でも、性格はまるで別物なんですね。


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水道水・ミネラルウォーターとの決定的な違い

一方で、私たちが普段飲んでいる水。
水道水やミネラルウォーターには、必ずと言っていいほど、ミネラルや微量の塩類が含まれています。


これは、体にとってはありがたい成分。
健康面では、むしろ必要不可欠な存在です。


ですが、電気の世界では話が変わります。


これらのミネラルやイオンは、 立派な導体の材料
電子や電流の移動を、しっかり手助けしてしまう存在です。


つまり、水道水が電気を通すのは、異常でも欠陥でもなく、 ごく自然な振る舞い


逆に言えば、純水が電気を通しにくいのは、「水だから」ではなく、「余計な成分がないから」なんです。


純水とは「透明で清潔な水」ではなく、「電気を運ぶ成分が意図的に取り除かれた水」だと理解すると、性質の違いがすっきり整理できます。


純水が電気を通さない理由

では、ここからが本題です。
なぜ純水は、これほどまでに電気に対して無口なのでしょうか。


見た目はただの水。
触っても冷たいだけ。
でも電気を前にすると、ほとんど反応を示さない。


その理由は、水の中で誰が電気を運ぶ役なのかを知ると、すっと理解できます。


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電気を運ぶのは電子ではなくイオンだから

まず押さえておきたいのが、水中の電流の正体です。


金属の中では、電子が移動することで電気が流れますよね。
これは、ここまで何度も出てきたおなじみの仕組みです。


ところが水の中では、主役が変わります。
電子ではなく、イオンが動くことで電流が成立します。


  • プラスに帯電した粒子。
  • マイナスに帯電した粒子。


それらが水の中を移動することで、はじめて「電気が流れた」と言える状態になるわけです。


ですが純水の場合、そのイオンがほとんど存在しません。


動いて電気を運ぶイオンがいなければ、そもそも電流は生まれません。


これが、純水が電気を通さない最大の理由です。


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自己解離は起きているが、量が圧倒的に少ないから

ここで一つ、よくある誤解も整理しておきましょう。


「純水にはイオンがまったく存在しない」


というわけでは、実はありません。


純水であっても、水分子はごくわずかに分かれて、 水素イオン水酸化物イオンを生み出しています。
これを自己解離と呼びます。


ただし、その量が問題です。


自己解離で生じるイオンの数は、 圧倒的に少ない
電気が流れたと実感できるほど、まとまって移動することは、ほぼありません。


結果として、純水は理論上は「完全な絶縁体」ではないものの、実用的にはほとんど電気を通さない存在として扱われます。


純水が電気を通さないのは、水そのものが特別だからではなく、電気を運ぶ役割を担うイオンがほぼ存在しないからなのです。


絶縁体としての純水の利用

高電圧設備の水冷抵抗と碍子(ファラデーケージ内部)

高電圧設備の水冷抵抗と碍子
高電圧回路の部品を水で冷やしつつ、
導電性を極限まで下げた純水で漏れ電流を抑える。

出典:『A close-up of high-voltage insulators and resistors within the Faraday cage for the gyrotron power supply Wendelstein 7-X 』-Photo by Siarhei Besarab/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0


 


「じゃあ純水って、本当に絶縁体として使えるの?」


ここ、気になりますよね。
結論から言うと、 条件つきでYESです。


ただし、ゴムやガラスのように


「置いておけば勝手に絶縁してくれる素材」


というわけではありません。


純水は、 きちんと管理されてはじめて力を発揮する、かなり繊細な存在
この前提を押さえておく必要があります。


純水は「性質そのもの」よりも、「管理された状態」で使われる絶縁材料です。


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半導体・精密機器の洗浄

純水がもっとも活躍している代表例が、半導体製造や精密機器の洗浄工程です。


この分野では、とにかく 不純物を一切持ち込まないことが最優先。


イオンやミネラルがわずかでも残っていると、回路の誤動作や性能低下につながってしまいます。


その点、純水は電気的にも、化学的にも、余計な影響をほとんど与えません。


部品表面に触れても


  • 反応しない。
  • 汚さない。
  • 電気的なノイズも生まない。


だからこそ、「洗う」という行為そのものが、リスクにならない水として、純水は欠かせない存在になっているんです。


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高電圧設備での冷却・洗浄用途

もう一つの用途が、発電設備や研究施設など、高電圧を扱う環境です。


こうした現場では、冷却や洗浄のために水が必要になることがあります。
ただし、普通の水を使うわけにはいきません。


そこで選ばれるのが、純水。


  • 電気を通しにくく
  • 金属を腐食させにくく
  • 設備への影響が最小限に抑えられる


ただし、ここで重要なのが条件です。


純水は、 空気中の二酸化炭素や微量成分をすぐに取り込んでしまうため、放っておくと、あっという間に「ただの水」に近づいてしまいます。


そのため、使用されるのは 徹底的に管理された閉鎖環境のみ。


「純水だから安全」ではなく、「純水である状態を維持できるから使える」。
この考え方が欠かせません。


「安全な水」と誤解してはいけない

純水は、放置すればすぐに不純物を取り込みます。 その結果、電気を通す水に変化してしまうことも珍しくありません。日常環境での感電対策として、 純水をあてにするのは危険です。純水は使いどころを選ぶことで、はじめて「電気に強い水」として役立つのです。


 


純水が電気を通さない理由は、水が特別な力を持っているからではありません。


電気を運ぶイオンが、ほとんど存在しない状態だから
それだけの、でもとても大事な話です。


水は条件次第で、導体にも、ほぼ絶縁体にもなる。
その切り替えを決めているのは、「混じり物の有無」なのです。


純水が電気を通さねぇのはよ、中にイオンがほとんどいなくて、電流を運ぶ粒子がゼロだからなんだぜ。ピュアすぎて電気すら通せねぇ…まさに“孤高の水”ってわけだ、しっかり覚えとけよ!