ヨーロッパが全体的に雷が少ない理由

ヨーロッパで雷が少ない理由

ヨーロッパは高緯度で気温が比較的安定しており、強い上昇気流が発生しにくいため雷が少ない。湿度や大気の対流条件も雷の発生にはあまり適していない。特に北西ヨーロッパでは雷が非常に少ない地域となっている。

ヨーロッパが全体的に雷が少ない理由

ヨーロッパって、実は雷がそこまで多くない地域なんです。
「ヨーロッパ=どこか落ち着いた空模様」というイメージ、あれ、じつはあながち間違いでもありません。


夏に雷雨がまったく起きないわけではありませんが、毎日のようにゴロゴロ鳴る地域と比べると、 雷の発生頻度はかなり控えめ


  • 空が荒れにくい
  • 天気が極端に暴れにくい


そんな印象を持たれやすいのも、ちゃんと理由があるんです。


じゃあ、 なぜヨーロッパでは雷があまり発生しないのか?


答えはシンプルで、 気候・地形・大気の流れ
この三つが、雷を「育ちにくくする方向」で噛み合っています。


  • 赤道付近のような強烈な日差しもない。
  • 湿気が一年中たまり続ける環境でもない。
  • さらに、大陸全体の空気の流れが、比較的おだやか。


つまり、 雷が生まれるための条件そのものが、ヨーロッパでは揃いにくいというわけです。


このあとでは、ヨーロッパの空がなぜ「静か」なのかを、 気候・地形・大気循環の視点から、順番にほどいていきます。


「雷が少ない」という事実の裏側、思っているより理にかなっていて、なかなか面白いですよ。



雷が起きるには「材料」が必要!

積乱雲の成長段階と雷発生の流れを示す図解

積乱雲の成長段階と雷発生の流れを示す図解
雷には、強い上昇気流・大量の水滴や氷粒・温度差という「材料」がそろうことが欠かせず、積雲が発達して成熟期に入ると雲内部で降水粒子の衝突が活発になり、電荷分離が一気に進む。

出典:『Thunderstorm formation』-Photo by The High Fin Sperm Whale/Wikimedia Commons Public domain


 


まず大前提として、雷が生まれるには、いくつかの条件が同時にそろっていないと成立しません
気まぐれにピカッと光っているように見えて、実はかなり理屈どおりの現象なんです。


その必須条件が、次の3つ。


  • 強い上昇気流:地面付近の空気が、ぐいぐいと上へ押し上げられる状態。
  • たっぷりの水蒸気:雲をつくる材料。これが不足すると、雲そのものが育ちません。
  • 温度差:空気が上下で入れ替わりやすくなり、動きが激しくなる要因。


この3点セットがそろうと、空の中では積乱雲が一気に成長しはじめます。
その内部で電気がたまり、やがて雷として放出されるわけです。


逆に言えば、どれか一つでも欠けていると、雲はそこまで発達せず、雷までは至りません。


つまり、 雷は「たまたま起きる現象」ではなく、「条件がそろった結果として起きる現象」ということ。


まずはこの基本ルールを押さえておくと、雷が多い地域と少ない地域の違いが、ぐっと理解しやすくなりますよ。


ヨーロッパに足りない「雷の材料」

冬の西ヨーロッパの衛星画像

冬の西ヨーロッパの衛星写真
海洋性気候で気温差が小さく、強い積乱雲が育ちにくい。
前線性の雲が多く、雷の頻度が下がる。

出典:『Western Europe (MODIS 2022-01-17)』-Photo by MODIS Land Rapid Response Team, NASA GSFC/Wikimedia Commons Public domain


 


ですがヨーロッパは、雷を生み出すために必要なこの「材料」が、そもそもそろいにくい地域なんです。


条件が一部欠けているだけで、雷はぐっと起きにくくなる。
その典型例が、まさにヨーロッパなんですね。


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気温:ほどよく暖かいが、突き抜けない

ヨーロッパは、緯度だけを見ると「もっと寒そう」な場所が多いですよね。
それでも極端に冷え込まないのは、メキシコ湾流(暖流)の影響が大きいからです。


ただし、その一方で、 夏になっても赤道直下のような「猛烈な暑さ」になることは少なめ


つまり、積乱雲を一気に押し上げるほどの強烈な熱エネルギーが不足しがちなんです。
空気は温まるけれど、爆発的には持ち上がらない。
この差は、雷にとってかなり大きなポイントです。


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湿気:水蒸気がたまりにくい

ヨーロッパ全体を見ると、比較的乾燥した気候の地域が多めです。
とくに地中海性気候のエリアでは、夏はカラッとしていて雨も少なめ。


その結果、 水蒸気が不足しやすい=雲の材料が足りない状態になりがち。


雲が育たなければ、当然、雷雲もできにくい。
雷が少ないのも、かなり納得のいく話ですよね。


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地形:空気がぶつかりにくい構造

雷が発生しやすいのは、山に囲まれた盆地や閉じた平野のような場所です。


ところがヨーロッパは、アルプス山脈を除けば、全体として高低差がそこまで激しくない地域が広がっています。


そのため風の流れが比較的スムーズで、 空気が上下で激しくぶつかりにくい
結果として、積乱雲が育つきっかけ自体が生まれにくいんです。


 


まとめると、 ヨーロッパは「暑さ・湿気・地形」のどれもが穏やかで、雷が本気を出しにくい環境だということ。


空が落ち着いて見えるのは偶然ではなく、ちゃんと理由があっての話なんですね。


ヨーロッパでも雷が多めな場所はある

カルパチア山脈を弧状に捉えた衛星写真(MODIS)

カルパチア山脈の衛星写真
弧を描く山脈と周辺平野のコントラストが分かる。
山地の上昇気流で積乱雲が育ちやすく、雷が多い地域の一つ。

出典:『Carpathian Mountains (MODIS 2025-07-06)』-Photo by MODIS Land Rapid Response Team, NASA GSFC/Wikimedia Commons Public domain


 


とはいえ、ヨーロッパ全域が雷ゼロというわけではありません。


地形や気候条件がかみ合う一部の地域では、ヨーロッパの中では比較的雷が多く発生します。


  • アルプス南麓(北東イタリア・フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア周辺)
  • アドリア海沿岸〜ディナルアルプス(スロベニア〜クロアチア〜ボスニア周辺)
  • カルパチア山脈周辺(ルーマニア〜ハンガリー〜スロバキア東部など)


これらの地域はいずれも、山地による上昇気流・海や平野から供給される湿った空気・夏場の気温上昇
という条件が重なりやすく、ヨーロッパの中では雷が発生しやすいエリアとされています。


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アルプス南麓:海の湿った空気が山で押し上げられる

アルプス南麓、とくに北東イタリアあたりは、ヨーロッパの中では雷がわりと多い地域です。


理由はシンプルで、アドリア海からやって来るあたたかく湿った空気が、アルプスの山肌にぶつかって持ち上げられるから。
空気がぐっと上に押し上げられると、雷雲が育ちやすくなります。


「海が近い+すぐ山」という地形が、雷を呼び込みやすくしているんですね。


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アドリア海沿岸〜ディナルアルプス:海風と山が雷を生みやすい

スロベニアからクロアチア、ボスニアにかけてのアドリア海沿岸も、雷が起きやすいエリアです。


昼間になると、海の上の湿った空気が陸に流れ込み、それがディナルアルプスの山々にぶつかって一気に上昇します。


この「海からの風」と「山脈」の組み合わせが、雷雲をつくるきっかけに。
夏には、短時間だけど勢いのある雷雨が起こることもあります。


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カルパチア山脈周辺:内陸でも暑さと地形で雷が起きる

ルーマニアやハンガリー、スロバキア東部に広がるカルパチア山脈周辺も、内陸としては雷が多めな地域です。


夏になると平野部の気温が上がり、あたためられた空気が山の方へ流れ込むようになります。
そこに山地の影響が加わることで、空気が持ち上げられ、雷雲ができやすくなるのです。


海から遠くても、暑さと地形がそろえば雷はちゃんと起きる、という分かりやすい例ですね。


 


ヨーロッパは「雷が少ない大陸」というイメージを持たれがちですが、山・湿気・気温といった条件がそろう場所では、意外としっかり雷が発生します。


全体としては穏やかでも、場所によって表情がガラッと変わる──
それがヨーロッパの雷の特徴といえそうです。


ヨーロッパってのはよォ、空がわりと落ち着いてんだよ。湿気もねぇし、熱気もイマイチだし、山のド迫力も少ねぇ。そりゃオレ様が暴れるにはちょいと物足りねぇってワケよ!でもな、アルプスあたりなら…まぁちょっとはテンション上がるかもなッ!