プラスチックが電気を通さない理由

プラスチックが電気を通さない理由

プラスチックは有機化合物でできており、分子中に自由電子が存在しないため電気を通さない。軽くて丈夫な上に絶縁性が高く、電子機器や配線のカバーとして重宝されている。加工性にも優れており、多くの用途に利用されている。

プラスチックが電気を通さない理由

毎日なにげなく触っているスマホの外装、コンセントの差し込み口、家電のスイッチやコードの被覆。


そこに当たり前のように使われているのが、プラスチックです。


でも考えてみると、ちょっと不思議ですよね。
こんなに身近で、軽くて、硬かったり柔らかかったりする素材が、どうして電気だけは通さないのでしょうか。


プラスチックは「形が便利」だからではなく、「中身の構造」が電気を拒んでいます
この視点を持つと、プラスチックの役割が一段はっきりしてきます。


この記事では


  • プラスチックとは何か。
  • なぜ電気を通さないのか。
  • そして、どんな場面でその性質が活かされているのか。


順を追って、やさしく見ていきましょう。



プラスチックとは何か

ポリエチレン(PE)の繰り返し構造式(プラスチック絶縁体の代表例)

ポリエチレン(PE)の繰り返し構造式
炭素と水素の鎖で自由電子が生まれにくく、電気を通しにくいプラスチックの典型。

出典:『Chemical structural formula of polyethylene』-Photo by ChemSim/Wikimedia Commons Public domain


 


まずは基本から、プラスチックという素材の正体を整理していきましょう。


「軽い」「便利」「何にでも使われている」


そんなイメージが先に立ちがちですが、中身をのぞくと、かなり理系ど真ん中の素材です。


プラスチックは、偶然できた便利素材ではありません。
分子レベルで性格を決められた、 設計された材料なんです。


プラスチックは、性質が“素材任せ”ではなく“分子構造で決まる”人工材料です。


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高分子(ポリマー):とても長い分子の集まり

プラスチックの正体は、高分子化合物(ポリマー)


とても小さな分子が、鎖のようにつながって、 異常に長い巨大分子を作っています。


この
「長い」
「絡み合う」
という構造が、プラスチックの性格を決定づけます。


軽いのに、意外と丈夫。
薄くしても、簡単には破れない。
加熱すれば、自由に形を作れる。


これらはすべて、短い分子ではなく、 長大な分子鎖が絡み合っているからこそ生まれる性質です。


見た目は単純でも、中身はかなり複雑。
ここがプラスチックの面白いところですね。


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熱可塑性・熱硬化性:性格の違うプラスチックたち

プラスチックには、大きく分けて2つのタイプがあります。


一つは、温めるとやわらかくなり、冷やすと固まる熱可塑性プラスチック


もう一つは、一度固まると、二度と溶け直さない熱硬化性プラスチックです。


前者は、成形し直しができる柔軟派。
後者は、形が崩れない頑固派。


電気製品の内部や、発熱を伴う場所では、 熱に強く、形状が安定するタイプが特に重宝されます。


「どのプラスチックを使うか」は、見た目ではなく、 使われる環境から逆算して選ばれているんですね。


プラスチックは単なる「軽い人工素材」ではなく、分子構造の段階から用途を想定して作られた高分子材料だと考えると、その本質が見えてきます。


プラスチックが電気を通さない理由

ここからが本題です。
なぜプラスチックは、電気を相手にしても、あれほど淡々とブロックできるのでしょうか。


柔らかそうに見えるものもあれば、カチカチに硬いものもある。
種類はさまざまですが、 電気に対して強いという点は共通しています。


その答えもやはり、見た目ではなく中身の構造にあります。


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自由電子がほぼ存在しないから

電気が流れるために必要なもの。
それは、自由に動ける電子です。


金属の中では、電子は原子からゆるく解放された状態で存在していて、電圧をかけると、行ったり来たり、かなり身軽に動けます。


ところがプラスチックでは、事情がまったく違います。


電子は、 分子同士の結合に強く縛られた状態にあり、勝手に動き回ることができません。


押しても、引いても、その場からほとんど動かない。


電子が自由に動けない場所では、電流という現象そのものが成立しません。


これが、プラスチックが絶縁体として働く、もっともシンプルで、そしてもっとも重要な理由です。


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分子構造が電気の通り道を作らないから

もう一つ見逃せないのが、分子の並び方です。


プラスチックの分子は、金属のように規則正しい格子状ではなく、長い鎖がランダムに絡み合った構造をしています。


つまり


「ここを通れば電子が進める」


という一本道が、そもそも存在しません。


仮に電子が少し動こうとしても、すぐに行き止まり。
連続して進めるルートがなく、途中で完全に止まってしまいます。


結果としてプラスチックは、電気に対して 通路そのものを用意しない素材になるわけです。


プラスチックは偶然電気を通さないのではなく、分子構造の段階で電気を拒むようにできた素材だと考えると理解しやすくなります。


絶縁体としてのプラスチックの利用

樹脂製カバーの照明スイッチ(プラスチック外装)

樹脂製カバーの照明スイッチ
外装のプラスチックが手を電気部品から隔て、感電や短絡のリスクを下げる。

出典:『Plastic Light switch』-Photo by Samiknoov/Wikimedia Commons CC0 1.0


 


ここまでで、プラスチックがなぜ電気を通さないのか、その理由はかなりクリアになってきました。
では、その性質が実際の電気の現場で、どのように使われているのか。
ここを見ていきましょう。


結論から言えば、プラスチックは今や電気と人を隔てる主役級素材
日常生活から産業分野まで、欠かせない存在になっています。


プラスチックは、電気を遮りながら人が安全に触れられる環境を作るための素材です。


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コンセント・スイッチ類:触れる場所を守る

コンセントやスイッチなど、人の手が直接触れる場所。
ここには、ほぼ例外なくプラスチックが使われています。


理由はシンプルで、 感電を防ぐため
内部では電気が流れていても、外側にいる人とは、確実に切り離す必要があります。


さらにプラスチックの強みは、 形を自由に設計できること。


丸みを持たせたり、指が引っかからない形にしたり、スイッチの感触を調整したり。


安全性と使いやすさを、同時に実現できる素材だからこそ、こうした「触れる部分」を任されているんですね。


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電線被覆:電気を正しいルートに閉じ込める

電線の中を流れる電気は、本来、決められた道筋だけを進むべき存在です。
外に漏れてしまえば、感電やショート、火災の原因になってしまいます。


そこで活躍するのが、プラスチック製の被覆。


電気をしっかり遮断しながら、同時に、外部からの衝撃や摩耗、曲げ伸ばしによるダメージからも守ります。


電気的な安全と、物理的な耐久性。
この二つを一緒に担える点が、プラスチックが電線被覆に選ばれ続けている理由です。


プラスチックは金属やセラミックに比べて、 軽く、安価で、大量生産しやすい。この実用性があるからこそ、「電気を止める力」と「使いやすさ」を同時に満たす素材として、絶縁材料の主役になっているのです。


 


プラスチックが電気を通さない理由は、見た目の問題でも、硬さの問題でもありません。


電子が自由に動けない分子構造を持っているから
それが、ただ一つの答えです。


私たちは今日も、プラスチックに守られながら、電気と安心して付き合っている。
そう思うと、この素材がちょっと頼もしく見えてきますよね。


プラスチックが電気を通さねぇのはよ、電子が自由に動けねぇ高分子の構造をしてるからなんだぜ。だからこそ、オレたちの身の回りで“電気から守る壁”としてバリバリ働いてんだ、覚えとけよ!