

服に触れていて、「ビリッ」と電気が走ることはあっても、 布そのものを通して感電することって、ほとんどありませんよね。
セーター、シャツ、カーテン、タオル──毎日当たり前に使っている布ですが、実は電気に対しては、かなり慎重な距離感を保つ素材です。
布は「電気を止めるために作られた素材」ではないのに、結果として電気を通しにくい
ここが、ちょっと面白いポイントなんです。
そこで、この記事では
順番に、わかりやすく紐解いていきます!
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セルロース(綿など天然繊維の主成分)の化学構造式
長い多糖鎖からなる有機高分子で、自由電子が動きにくく絶縁体寄りの性質を示す。
出典:『Cellulose-2D-skeletal』-Photo by Slashme/Wikimedia Commons Public domain
まずは、布という素材の正体から整理していきましょう。
布と聞くと、「柔らかいもの」
「身にまとうもの」
そんな感覚的なイメージが先に浮かびますよね。
でも中身をよく見ていくと、布はかなり理にかなった、 構造で勝負する素材だということが分かってきます。
布は感触で語られる素材ですが、本質は「構造」でできています。
布は、一本一本の繊維が集まり、それを織ったり、編んだりすることで作られています。
一本の繊維は、とても細く、とても軽い。
それが何本も絡み合い、間に空気を含みながら、一枚の布として形を保っています。
素材の種類はさまざまですが、共通しているのは、 「細い繊維が集まって、スカスカした空間を持つ構造」だという点です。
この空間こそが、布の性格を大きく左右する重要なポイントになります。
天然素材か、人工素材か。
そこに違いはあっても、布を構成する繊維の多くは、高分子でできた素材です。
しかもその多くは、電気の観点から見ると、 かなり絶縁体寄り。
金属のように、電子が自由に行き来できる構造ではなく、電子は分子の中にしっかり縛られています。
さらに、繊維同士のあいだには空間があり、連続した「通り道」が作られにくい。
この 高分子素材+空間を含んだ構造。
ここが、布という素材の基本設計なんですね。
布は見た目以上にスカスカした構造を持つ、繊維の集合体だと考えると理解しやすくなります。
では、ここからが本題です。
なぜ布は、見た目も触り心地もやわらかいのに、電気に対しては案外しっかり距離を取れるのでしょうか。
ポイントは、素材の強さではなく、 電気が進めるかどうかという構造の話です。
電気が流れるためには、電子やイオンが連続して移動できる道が必要です。
金属のように、原子がぎっしり並び、電子がスムーズに行き来できる構造であれば、電流は簡単に成立します。
ところが布の中では、状況がまったく違います。
一本一本の繊維は、互いに接触してはいるものの、 電気が一直線に進めるような連続した通り道を作っていません。
繊維は細く、配置もランダム。
しかも素材自体が高分子で、電子やイオンが自由に動ける性質を持っていない。
電気が進めるルートそのものが存在しない構造
これが、布が電気を通しにくい最大の理由です。
さらに布には、もう一つ強力な要素があります。
それが、 大量の空気を含んでいるという点です。
繊維と繊維のあいだには、目に見えない小さな空間が無数にあり、そこには空気が詰まっています。
この空気、実は非常に優秀な絶縁体。
電気は、固体の中を連続して進むのは得意ですが、空気の層にぶつかると、一気に足を取られます。
布の中では
繊維 → 空気 → 繊維 → 空気……
という分断が何層にも重なっている。
その結果、電気は途中で何度も行き止まりになり、まとまった流れを作れなくなるわけです。
布が電気を通しにくいのは、素材の弱さではなく、繊維と空気が作る「分断された構造」によるものだと理解すると納得しやすくなります。

布製の電気絶縁テープ
導体の継ぎ目を巻いて露出を覆い、短絡や感電リスクを抑える。
出典:『Izolenta chernaya tkanevaya i sinyaya PVKh』-Photo by Andshel/Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0
布は、ゴムやプラスチックのような
専門的な絶縁材料ではありません。
ですが、日常生活の中では、その「電気を通しにくい性質」が、ちゃんと役割を果たしています。
ガチガチに遮断するのではなく、 電気と距離を取らせる。
この“ゆるさ”こそが、布の持ち味です。
布は電気を完全に止める素材ではなく、日常レベルで接触リスクを下げるための緩衝役です。
服というのは、人の体と外の世界のあいだに、常に一枚はさまっている存在です。
それと同時に、電気的にも、 直接触れるリスクを下げる層として働いています。
たとえば、金属製のドアノブや手すり。
素手で触れるより、袖越しに触れたほうが、ヒヤッとした感覚は減りますよね。
これは、布が電気を「止めている」というより、 電気との距離を一段つくっているから。
日常生活における安全性は、こうした小さな積み重ねで保たれています。
軽作業用の手袋や、布製の保護具も、よく使われる場面です。
これらは、感電防止というより、 弱い電気や静電気との接触をやわらかく和らげる目的で使われます。
そうした意味では、布は十分に役立つ存在です。
ただし注意点もあります。
布はあくまで布。
高電圧に対する防護性能は期待できません。
電気工事や危険を伴う作業では、必ず専用の絶縁手袋や装備が必要になります。
用途の見極め。
ここはとても大切です。
もう一つ、布と電気の関係で外せない話が、静電気です。
布は電気を通しにくい一方で、素材や環境によっては、 静電気をためやすい性質も持っています。
この条件がそろうと、バチッとくるあの感覚が発生しやすくなります。
これは、電気が流れやすいからではなく、 逃げにくいからたまってしまうという現象。
布は、電気を通さないからこそ、静電気とちょっと複雑な関係にあるんですね。
布は万能な絶縁体ではありませんが、日常生活の範囲では電気と人とのあいだに適切な距離を作る役割をしっかり果たしています。
布が電気を通さない理由は、特別な加工がされているからではありません。
繊維がバラバラに集まり、空気を多く含む構造そのものが電気を分断している
それが答えです。
柔らかくて、身近で、いちばん人に近い素材。
布は今日も、さりげなく電気との距離を保ってくれています。
布が電気を通さねぇのはよ、繊維の中で電子が自由に動けねぇ構造だからなんだぜ。普段は頼りになる絶縁体だが、濡れた時は油断すんなよ、覚えとけ!
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