

「雷って電気なんでしょ?
じゃあ何ボルト?何アンペア?何ジュール?」
──こんなふうに考えたこと、きっとありますよね。
理科の授業や家電の表示で見慣れている数字が頭に浮かんで、「まあ強くても家庭用の何百倍くらいかな?」なんて想像してしまいがちです。
でも実は、その感覚、完全に裏切られます。
想像の10倍どころか、100倍どころか、ケタがごっそり違う世界なんです。
雷の電気は
「強い」
「すごい」
──そんな言葉では追いつかないレベル。
もはや非常識という表現のほうがしっくりきます。
このページでは、雷が持っている 電圧・電流・エネルギー(ジュール)が、いったいどれほど桁外れなのかを、順番に見ていきます。
家庭用コンセントや家電、身近な電気との比較も交えながら、「なるほど、そりゃ危ないわけだ……」と腑に落ちる形で解説していきますね。
雷は「ちょっと強い電気」なんて次元ではなく、人間のスケール感そのものを軽々と飛び越えてくる存在
知れば知るほど、自然現象としての雷が、どれだけ別格なのかが見えてきますよ。
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送電鉄塔近くに落ちる激しい稲妻(ドイツ)
雲と地上の電位差が限界に達すると、放電路が一気につながり強烈な発光になる。
鉄塔のような高い構造物は電場が集中しやすい分、雷の電圧も巨大になる。
出典:『Lightning Pritzerbe (MK)』-Photo by Mathias Krumbholz/Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0
まずは、雷のボルト(V)、つまり電圧の大きさから見ていきましょう。
電気の話はここが入口。ここを押さえるだけで、「雷が別格な理由」が一気に見えてきます。
ふだん私たちが使っている家庭用コンセントは、100ボルトが基本ですよね。
エアコンや電子レンジなど、一部の家電は200ボルト仕様だったりもします。
このあたりが、日常感覚の「強い電気」の上限。
……と思っているところに、雷が登場します。
でも、雷はケタが違います。
ほんとに、笑ってしまうくらい違います。
雷の電圧は、なんと1億〜10億ボルトにも達すると考えられています。
もう完全に別世界。
比較対象が家庭用電気じゃなくなる瞬間です。
なぜここまでとんでもない数字になるのか。
理由のひとつが、空気の限界にあります。
空気は本来、電気を通しにくい物質。
でも電圧が高くなりすぎると、その抵抗をぶち破ってしまいます。
その結果が、空気中で起きる放電──バチッ!という現象。
雷は、「空気ですら我慢できないレベル」
まで電圧を溜め込んだ末の放電なんです。
ここでひとつ、誤解しやすいポイントも整理しておきましょう。
雷といっても、すべてが毎回1億ボルト超えというわけではありません。
雷にも、種類と状況があります。
雷の「見た目」は似ていても、発生場所や向き、環境条件によって、その電圧にはかなりの差が出るんですね。
ただどのタイプであっても人間の感覚を完全に超えた電圧であることに変わりはありません。

フルグライト:雷の大電流で砂がガラス化したもの
落雷の電流が地中へ流れ込む瞬間、通り道の砂が高温で溶けてガラス状に固まる。
電流の「太さ(A)」が生む熱と破壊力を、形として残した痕跡。
出典:『Fulgurite』-Photo by Mario Hendriks/Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0
続いては、アンペア(A)。
これは電圧とは別で、「どれくらいの量の電気が一気に流れるか」を表す指標です。
いわば電気の太さ、そんなイメージですね。
まずは身近なところから。
家庭でブレーカーが落ちるのは、だいたい20〜30アンペア前後。
「ドライヤーと電子レンジを同時に使ったら落ちた!」なんて経験、ありませんか?
あれが、家庭用としての限界ラインです。
もう少しスケールを上げると、電車のモーターや工場の大型設備では、数百アンペア規模の電流が流れています。
ここまで来ると、もう「強力な電気」という印象ですよね。
……ところがです。
雷は、そのさらに上を行きます。
雷の電流は、およそ1万〜20万アンペアに達するとされています。
桁が違う。
文字どおり、世界が変わる数字です。
しかも厄介なのは、その流れ方。
雷は長時間じわじわ流れるわけではありません。 1秒にも満たない、ほんの一瞬で、信じられない量の電気が──
バシーンッ!と流れ込みます。
例えるなら、家庭のブレーカーが「ちょっとずつ水が増えて溢れる」現象だとしたら、雷は「ダムが一瞬で決壊して、全部まとめて流れ込む」感じ。
受け止めきれるわけがないんです。
電圧が高いだけでも危険。
そこに桁外れのアンペアが組み合わさる。
だから雷は、触れるどころか、近くにあるだけで危険な存在になるんですね。
このあと見る「ジュール(エネルギー)」の話で、その恐ろしさがさらにハッキリしてきますよ。

落雷で炎上したヤシの木
落雷によってごく短時間に莫大なジュール(エネルギー量)が一点に集中し
樹液や繊維が一気に加熱・炭化したことで生じた燃焼
出典:"Coconut tree burning after a lightning strike" - Photo by Shanmugamp7 / Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0
最後に登場するのが、ジュール(J)。
ここまで見てきたボルトやアンペアと違って、ちょっとピンと来にくい単位かもしれませんね。
ジュールというのは、 「どれだけのエネルギーが実際に放出されたか」を表す単位です。
言い換えるなら、電気が仕事をした結果の大きさ。
熱になったり、光ったり、物を壊したりする、その総量です。
まずは身近な例から。
たとえば、10ワットのLED電球を1秒つけると、使われるエネルギーは10ジュール。
ドライヤー(1200ワット)を1秒使えば、だいたい1200ジュールです。
このくらいなら、日常感覚の中に収まりますよね。
でも、雷はここでも常識を軽く飛び越えてきます。
雷1発が放出するエネルギーは、推定で10億〜1000億ジュールにも達すると考えられています。
もう数字を見ただけで、感覚が追いつきません。
家庭用電化製品を何年分まとめて使ったんだ、というレベルです。
しかも重要なのは、このとてつもないエネルギーが、ほんの一瞬で解放されるという点。
だから雷は
──こんなことが、平然と起きてしまうんですね。
ここで、これまでの話が一本につながります。
ジュールは、ざっくり言えば電圧と電流の掛け算の結果。
雷は
この2つが同時に成立しています。
だからこそ、結果として生まれるエネルギーも、人間の想像をはるかに超えた規模になるわけです。
雷は、長時間エネルギーを出し続けるタイプではありません。
むしろ、時間だけ見れば一瞬。
それでも被害が大きくなるのは、エネルギーが超・高密度で集中しているからです。
少しずつなら耐えられるものでも、一気に叩き込まれたら耐えられない。
雷の怖さは、まさにそこにあります。
まとめると、雷のジュールは、 「高すぎる電圧」と「多すぎる電流」が生み出した、瞬間最大のエネルギー爆発。
だから雷は、音や光だけでなく、物理的な破壊力まで持つ存在になるのです。
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