

雷って、ふつうは
「雲から地面に向かって、バリバリッ!と落ちてくるもの」
──そんなイメージがありますよね。
でも実は、それだけじゃありません。
よく知られていないけれど、ちゃんと存在します。 地面から空に向かって伸びていく「上向きの雷」。
しかもこれ、雷がドーンと落ちる直前の段階で、ひっそり始まっているんです。
目立たないけど、かなり重要な動き。
ここで大事なのは、「雷は必ず上から下に落ちる」という思い込みを、いったん外すこと。
実際には、雷がどっち向きに進むかは、 電気がどこに、どうたまっているかで決まります。
つまり、雷の「上向き・下向き」を決めているのは、電気のたまり方と放電の出発点なんです。
雲が主導で始まることもあれば、地面側が先に反応することもある。
その結果として、下向きに見える雷もあれば、上向きに伸びる雷も生まれます。
このページでは、 雷がどちら向きに進むのかを決める仕組みを
といったキーワードと一緒に、順を追って解説していきます。
「えっ、雷ってそんな裏側があったの?」
そんなふうに感じてもらえるところまで、やさしく、かみ砕いて見ていきますね。
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ジャカルタの夜空を走る落雷
高層ビル群の上空で、雲から地上へ鋭い稲妻が伸びる瞬間。
出典:『Lightning strike in Jakarta; June 2014』-Photo by skyseeker/Wikimedia Commons CC BY 2.0
私たちがいちばんよく目にする雷。
それは、空の雲から地面へ向かってストンと落ちてくるタイプです。
いわゆる下向きの落雷と呼ばれるものですね。
雷というと、「空から突然ズドン!」というイメージが強いかもしれません。
でも実は、その一瞬の裏側では、空と地面のあいだで、かなり丁寧な“準備運動”が行われているんです。
このタイプの落雷では、雲の下側にたまったマイナスの電気が、主導権を握っています。
雷雲の中では、上のほうにプラス、下のほうにマイナス、というふうに電気がしっかり分かれます。役割分担、ばっちり。
そして、雲と地面のあいだにできる電場が、もうこれ以上は耐えられない、というレベルまで強くなると──
ついに雲の側が先に動き出します。

先行放電のアニメーション
雷は一気に一直線で落ちるのではなく、先行放電が段階的に伸びる。
ジグザグと揺れながら、空気の抵抗が少ない道を選んでいる為、枝分かれも起きる。
出典:『Step leader lightning』-Photo by NOAA/Wikimedia Commons Public domain
まず伸び始めるのが、先行放電(リーダー)と呼ばれるもの。
これは、いきなり本番の雷が落ちるわけではなく、空気の通り道を探すための、いわば「下見ルート」。
先行放電は、ジグザグと揺れながら、空気の抵抗が少ない道を探すように、少しずつ地面へ近づいていきます。慎重な前進。
そしてある瞬間、地表から立ち上がってきた電気とつながった途端──
一気に大電流が流れ込みます。
つまるところ、 私たちの目に「ドーン!」と見える落雷は、この瞬間に一気に電気が流れ込むことで起きている現象なんです。
あのまぶしい光と轟音。
実は、空と地面がつながった“ゴールの合図”だった、というわけですね。

上向き雷放電の瞬間
雷雲との電場が強いと、鉄塔など高所から上向きリーダーが立ち上がる。
雲側と結合した直後に大電流の主放電へ移り、強い閃光として写る。
出典:Upward Lightning - Photo by ELECTROPHORUS / Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0
一方で、条件がガラッと変わると、雷の主役が入れ替わるケースも出てきます。
それが、 上向き雷放電と呼ばれるタイプです。
雷=雲から落ちてくるもの、というイメージが強いぶん、ここはちょっと意外に感じるところかもしれませんね。
このタイプでは、主導権を握るのは雲ではありません。
雷雲が近づくことで、地面と空のあいだの電場が一気に強まり、とくに地面側の電場が異常なレベルにまで高まります。
するとどうなるか。
雲が動き出すのを待つ前に、地上から先に電気が伸び始めるんです。
「もう待ってられない!」
そんな感じで、地面側が先に動いてしまうイメージですね。
この上向き雷が起きやすいのは、高さがあって、しかも尖った場所。
たとえば、鉄塔や高層ビル、山の上に立つ建造物などが代表例です。
こうした場所は、電場が一点に集中しやすく、電気から見ると、「ここから出発したほうが近いし楽そうだぞ」
と判断されやすい条件がそろっています。
高さ。形。位置関係。
全部がそろうと、地面側からスッと電気が立ち上がる。そんな流れです。
つまり、 雷は必ず雲が主導して始まるわけではなく、条件しだいでは地面側が先に動き出すケースもあるということ。
空だけを見ていると気づきにくいですが、雷のドラマは、地上でもちゃんと始まっているんですね。

日本海の雪雲帯(JPCZ)
冬の季節風によって筋状の雲が収束し、低い高度まで発達した雷雲を北陸沿岸に送り込む。この環境では雲と地上の距離が近く、電場が地上側で強まりやすいため、冬雷(北陸など)では地上から雲へ伸びる「上向き雷放電」が発生しやすい。
出典:『2018-01-23 Sea of Japan cold wave convergence zone by Aqua』-Photo by NASA (Aqua/MODIS), Peka/Wikimedia Commons Public domain
日本で上向き雷が多いことで知られている場所。
それが、北陸地方の冬雷です。
雷といえば夏、というイメージが強いかもしれませんが、北陸ではむしろ冬の雷が名物。しかも、ちょっと特殊。
その背景には、いくつもの条件が、きれいに重なっているんです。
まず大きなポイントが、雲の高さ。
冬の雷雲は、夏の積乱雲と比べて雲の位置がかなり低いのが特徴です。
つまり、雲と地面の距離が近い。
最初から、スタート地点がぐっと下がっている状態。
この距離の短さが、上向き雷にとっては、かなり都合がいい条件になります。
さらに追い打ちをかけるのが、日本海から吹きつける強い風と寒気。
これによって、雲と地面のあいだの電場が、地表付近で一気に強まりやすくなります。
その結果、「雲から降りてくるのを待つより、下から伸びたほうが早くない?」
という状況が生まれやすくなるわけです。
判断が早い。即行動。
そんな空と地面の関係。
そこに、 鉄塔や送電線といった、高くて尖った構造物が加わると──
条件は、ほぼ完成。
まとめると、 北陸の冬雷は「雲が低い」「風と寒気で電場が強い」「高い構造物が多い」という三拍子がそろい、上向き雷が発生しやすい環境なんです。
空だけの話じゃない。
地形と気候と人工物。
全部が噛み合った結果が、あの迫力ある北陸の冬雷なんですね。
まとめると、雷が下向きになるか上向きになるかは、電場の強さと距離、そしてどちらが先に動き出せるかで決まります。
雷というと、「雲から地面へ一直線に落ちるもの」
そんなイメージを持ちがちですよね。
でも実際の雷は、そんなに単純な現象ではありません。
空と地上。
それぞれが電気をため込みながら、じわじわ、じわじわと限界へ近づいていく。
そして、どちらが先に「もう無理だ」と動き出すか。
そのタイミングの差が、雷の向きを決めているんです。
雲が先なら下向き。
地面が先なら上向き。
ただそれだけ。だけど奥が深い。
言い換えれば、雷は「落ちてくるもの」ではなく、 空と地上のあいだで起きる綱引きの結果。
そのせめぎ合いの末に、上にも、下にも、電気の道が一気に走る。
そう考えると、雷ってただ怖いだけじゃなく、空と大地が限界まで張りつめた末に生まれる、ちょっとドラマチックな自然現象でもあるんですね。
上向き?下向き?どっちの雷かって?そりゃあ、オレ様と相手の電気の相性と位置で決まんだよ!上から手を伸ばしゃ、下からも迎えに来る…バチンと出会った瞬間、ドッカーンよ!雷ってのは一方通行じゃねぇ、まさに運命のビンタだぜ!
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