ガラスが電気を通さない理由

ガラスが電気を通さない理由

ガラスは原子が強く結合しており、電子が自由に動けない構造を持つため電気を通さない。結晶構造がない非金属で、絶縁体として非常に安定している。高温でも絶縁性を保つ特性がある。

ガラスが電気を通さない理由

窓ガラス、コップ、スマホの画面。
透明で硬くて、ちょっと割れやすい。
そんなガラスですが、「触って感電した」という話は、まず聞きませんよね。


電気を使う機器のすぐそばにあり、ときには高電圧の設備にも使われる。
それでもガラスは、当たり前のように電気を通さない存在として扱われています。


ガラスは見た目がツルツルだからではなく、内部構造そのものが電気を拒んでいる
ここが、いちばん大事なポイントです。


そこでこの記事では


  • ガラスとは何か。
  • なぜ電気を通さないのか。
  • そして、その性質がどんな場面で活かされているのか。


順を追って、やさしく解説していきます。



ガラスとは何か

ガラス状シリカ(SiO2)のアモルファス構造を示す模式図

ガラス状シリカ(SiO2)のアモルファス構造
SiO4骨格が不規則につながり、自由電子が動きにくい網目構造が絶縁性を生む。

出典:『Silica』-Photo by Jdrewitt (vector by Wimmel)/Wikimedia Commons Public domain


 


まずは、ガラスという素材の正体から、順番に見ていきましょう。


ガラスって、触れば明らかに固体なのに、金属や氷のような「結晶っぽさ」がまったくありませんよね。


この時点で、実はかなりクセのある存在。
ガラスは、固体の中でも少し変わった立ち位置にいる素材なんです。


ガラスは「結晶になりきれなかった固体」という、ちょっと特殊な成り立ちを持っています。


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非晶質(アモルファス):結晶にならなかった固体

ガラスは、非晶質(アモルファス)と呼ばれる構造をしています。


結晶の場合、原子は規則正しく、きれいに整列した状態で並びます。
まるで碁盤の目のような配置ですね。


ところがガラスでは、原子がその整列に失敗したまま、 ランダムな配置で固まっています。


溶けた状態から急激に冷やされることで、原子が並ぶ時間を与えられず、「並びたかったけど間に合わなかった」
そんなイメージです。


この
きっちり揃わない、秩序のない構造。


これこそが、後々、電気の性質に大きく関わってくる重要ポイントになります。


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主成分は二酸化ケイ素:ケイ酸塩のネットワーク

一般的なガラスの主成分は、二酸化ケイ素(SiO₂)です。


これは、ケイ素(Si)と酸素(O)が 非常に強く結びついた分子


しかもガラスの中では、このSiO₂が点在しているのではなく、ネットワーク状に連結した構造を作っています。


ケイ素と酸素の結合はとても安定していて、電子が勝手に離れたり、自由に動き回ったりする余地がほとんどありません。


結果として、電子は分子の中にしっかり閉じ込められ、外へ出ていけない状態になります。


この結合の強さと、 ランダムな構造
この二つが合わさることで、ガラスは電気に対して非常に鈍感な素材になるわけです。


ガラスは単なる「固くて透明な物質」ではなく、ランダムな原子配置と強固な分子結合を併せ持つ非晶質の固体だと理解すると、その性質が見えてきます。


ガラスが電気を通さない理由

では、ここからが本題です。
なぜガラスは、これほどまでに電気に対して無関心でいられるのでしょうか。


触っても、包んでも、近くに置いても、ほとんど反応を示さない。


その理由は、やはりゴムと同じく電子の振る舞いにあります。
ただし、仕組みはかなりガラス特有です。


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自由電子が存在しない強固な結合

電気が流れるためには、自由に動ける電子が不可欠です。


金属では、電子が原子から半ば解放された状態で存在し、電圧がかかると一斉に動き出します。


しかしガラスの場合はどうか。
電子は原子同士の結合に強く縛り付けられた状態にあり、その場から離れることがほとんどできません。


特に、ケイ素と酸素の結合は非常に強固。
電子は分子の中にしっかり固定され、「動いていいよ」と言われる余地がない構造になっています。


電子が自由に動けない構造では、そもそも電流という現象が成立しません。


これが、ガラスが絶縁体とされる、もっとも根本的で動かしがたい理由です。


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高温や高電圧でないと変化しない

もう一つ重要なのが、環境に対する鈍感さです。


通常の温度、通常の電圧。
この範囲では、ガラスの中で電子やイオンが動き出すことはありません。


もちろん、極端に高温になったり、非常に高い電圧が加わったりすれば、状況は変わります。


ガラスが溶けたり、絶縁破壊が起きたりするケースですね。


ですが、日常生活や一般的な電気機器のレベルでは、そうした条件に達することはまずありません。


結果としてガラスは、 ごく安定した状態で電気を遮り続ける素材として使えるわけです。


ガラスは特殊な条件が加わらない限り、構造そのものが変わらず、安定して電気を通さない性質を保ち続ける素材です。


絶縁体としてのガラスの利用

高圧送電線に使われるガラス碍子(ディスク型)

高圧送電線に使われるガラス碍子
ガラスの硬さと耐候性で導線を支え、電気を鉄塔へ逃がさない。

出典:『Italian high tension electric glass insulator』-Photo by Threecharlie/Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0


 


ここまでで、ガラスがなぜ電気を通さないのか、その理由はかなりはっきりしてきました。
では、その性質が実際にどんな場面で活かされているのか。
ここを押さえると、ガラスの評価が一段上がります。


ガラスは、ただ「昔から使われている素材」ではありません。 電気を扱う世界で、長年選ばれ続けてきた理由がちゃんとあるんです。


ガラスは、電気を遮りながら構造を支えるという難しい役割を同時にこなせる素材です。


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碍子(がいし):送電線を支えつつ絶縁する

送電線を見上げたとき、鉄塔や電柱に取り付けられている、白くて少しゴツい部品。
あれが碍子(がいし)です。


この碍子、ただの固定具ではありません。


電線をしっかり支えながら、 高電圧の電気が鉄塔側へ逃げるのを防ぐ
支える役と、遮る役。
この二役を同時にこなしています。


ガラスは、電気を通さないだけでなく、硬くて、重さにも耐えられる。


そのため、送電線という過酷な環境でも、長期間安定して使える素材として選ばれているわけです。


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真空管・放電管の外壁:電気を閉じ込める為

真空管や放電管の外側に使われているのも、ほとんどがガラスです。


理由はシンプルで、でも重要。


透明であること。 気密性が非常に高いこと。
そして、 電気を通さないこと。


この三つを、同時に満たせる素材が、実はあまり多くありません。


ガラスは、内部で電気がどんなに暴れても、外に漏らさず、しかも中の様子が見える。


電気を「閉じ込める器」として、これ以上ない適性を持っているんです。


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その他:耐熱・耐候性も評価される

さらにガラスは、電気的な性質だけでなく、時間に対する強さも評価されています。


紫外線を浴びても劣化しにくい。
雨や風にさらされても性質が変わりにくい。
高温環境でも安定して形を保つ。


こうした特性のおかげで、屋外設備や、発熱を伴う装置まわりでも、安心して使い続けることができます。


ガラスは「電気を通さない」だけでなく、長期間にわたって性能が変わりにくいという点まで含めて、信頼されている絶縁材料です。


 


ガラスが電気を通さない理由は、透明だからでも、硬いからでもありません。


電子を閉じ込める強固な結合と、ランダムな原子構造を持っているから
それが答えです。


割れやすいけれど、電気にはとても強い。
ガラスは、そんな少し不思議で、とても頼れる素材なのです。


ガラスが電気を通さねぇのはよ、電子が動けねぇ構造で自由電子がいねぇからなんだぜ。その性質を活かして、電気の世界じゃ“守り役”としてバリバリ働いてるんだ、覚えとけよ!